コラム

配信勉強会対談

ミュージックスクラムと題し、ライブハウスとミュージシャンによる

配信ライブ研究会を立ち上げました。

ギタリストの鬼怒無月(きどなつき)さんのお声掛けにより始まった

この配信勉強会の成果を対談形式でHPにまとめ、皆様に活用していた

だこうということで、本日、第1回目として、荻窪ルースターの佐藤さ

ん、高田馬場音楽室DXの賀山(かやま)さん、高円寺JIROKICHIの金

井さんの対談をお届けしたいと思います。

高円寺JIROKICHI金井(以下金井):荻窪ルースターは創業何年になられますか。

荻窪ルースター佐藤(以下佐藤):うちは1997年にオープンなので、創業24年に

なります。

金井:もう大変歴史のあるお店ですね。

佐藤:いえいえ……だってジロキチさんに至っては……

金井:46年目になります笑。

佐藤:長っ! 笑。

金井:ルースターに出演しているミュージシャンはプロの方が多いと思います

が、ジャンルというか、どのようなバンドが主に出演されていますか。

佐藤:まぁ、ルースターって名前がそもそもそのブルースの曲名だったりするんでブルース

系が多いのと、あとジャズ、ブラックミュージック系とかフュージョン。あとは歌謡曲や

ラテンですね。月曜日はオープンマイク的なブルースセッションも行っています。

音楽室DXは何年目でしたっけ。

高田馬場・音楽室DX賀山(以下賀山):うちは2009年にオープンなので、丸

12年になります。出演は、ロック、フュージョン、ポップスやアコースティッ

クも多いですね。普段大きな会場でやってるバンドのアーティストがソロで弾き

語りをやるというようなこともあります。

金井:この対談を読んでいるミュージシャンの方が配信ライブをしたいと思った

場合……_例えば僕がバンド組んで音楽室DXに出たいと思ったらどうしたらいい

んですか笑。

賀山:電話をください笑。

佐藤:いきなり行って、俺だ、配信やらせろーみたいな笑。

賀山:ブッキングは、よくある音源やプロフィールを送ってくださいとかいうよ

り、ミュージシャンの紹介とか、こちらからオファーとか、主に横のつながり。

そういうパターンがほとんどですよね。

佐藤:出演者を募ってというライブハウスと、そうではない店があると思います

が、たとえばブルーノート東京にデモテープ送ったり、店が出演者を募集しない

のと同じ感じでしょうかね。

金井:ジロキチも昔からそんなふうにラインナップは決まっています。信頼関係

の構築も重要だし、やっぱり演奏技術の問題もありますし。

けれど今は、こんな時期で、なかなかスケジュールが埋まらないんで、我こそは

と思う人はプロフィールと映像などを添付してお店にメールをいただけたらと思

います。

配信ライブを行うことになった理由、経緯

金井:去年の最初の緊急事態宣言前に、ライブハウスはマスコミに名指しで叩か

れ、ただ何も出来ずに、黙って休業せざるを得ない状況でした。

そんな中で荻窪ルースターと音楽室DXが配信ライブを始めたきっかけは…… 。

賀山:今、あらためて一年前を思い返すと……_3月、4月あたり、先が見えなく

て、けっこうしんどかったですよね。配信ライブは、全く考えていませんでし

た。そういうシステムがあるのは知っていましたけど、何を用意していいのかも

全然わからなかったですし。あとやっぱり、一番大きな問題はどれぐらい費用が

かかるのかということでしたね。

金井:ジロキチは、ちょうど45周年記念のイベント中だったので、中止になっ

たライブの前売チケットがすべて払い戻しになって、お金が本当になくなった

笑。配信機材なんて買う余裕がなかったので、どうしようって感じでした。

荻窪ルースターは配信はいつから始められたんでしょうか。

佐藤:(2020年の)5月くらいからですね。3月頭からライブが次々中止に

なったり延期になったりしたわけですけれど、そんな中、まだ配信というものが

定着する前に、まずYouTube でスーパーチャットっていう投げ銭システムが使え

るんじゃないかって話が盛り上がって。うちもYouTube チャンネルは一応あった

んで、止まってたのを急遽生かして。

それで配信をやろうと思ったんですけど、色々調べていくうちに、他にもやり方

があるんだっていうことになって。それで、YouTubeはやめて、5月から本格的

にツイキャスを使って始めたんです。

とにかく始める前は、ずっと勉強でしたね。配信って勝手にやっていいのかって

ことさえもわからなかったから_。さっき賀山さんがおっしゃったように、そも

そも何を用意したらいいのか、どうすればいいのか、与作、じゃなくて模索して

ましたね。笑

一同:笑

賀山:僕は最初、ほんとに何もしなかったんですよ。店の掃除ぐらいしかやるこ

となくて、どうしたもんかなと思ってたんです。

でも、大きなきっかけがあった。あるブログを読んでピンチな時はとにかく外に

向かって発信する事やサービスを考えることを大事にしたほうがいいという言葉

に影響を受けて……とにかく作れるもの作っておこうとまずYouTube チャンネ ルと

通販のサイトを登録した。それでTシャツを作って通販をさせてもらって、 おかげ

さまで多くの人に買ってもらったりとか……。 そうこうしているうちに音楽室DXに

毎月出演してくれている井上昌己(しょう こ)さんというアーティストがいて、彼女の

事務所が持っているレンタルスペー スみたいなところで、YouTubeの配信ライブを

やるから音作りを手伝ってほし い、と頼まれて……。ありがたいことに前もって配信

のテストをする日があって、YouTube に僕が作った音を送ってチェックするという

作業を半日かけてやったんです。配信と会場の音作りが違うので、こうやったら

こういうふうに聴こえるとか、体験できたんですよ。4台のカメラを使った最新の

設備や配信のやり方も初めて見た。その体験が、ちょっとトライしてみようかなと

思ったきっかけですね。

けれど、そのとき見たプロ用の機材を揃えようと思うと、100万円とか普通に

かかるので……

その配信スタッフの方にメールで色々聞いて最低限どんな機材

を揃えれば良いかなどを具体的に教えていただいたんです。

ネットでも色々調べました。今考えるとかなり無謀なスタートだったと思います。

そんな感じで、準備不足ながら、5月後半からスタートしました。

金井:(2020年の)5月って、まだ私たちライブハウスは休業要請があった

り、世間の目が厳しかったりで、営業再開の見込みが立たなかった時期ですよ

ね。とにかくしばらくはお客さんを入れられない。

でも無観客の配信ライブならやってもいいみたいな情報ってちらほら聞こえてき

ていましたよね。

佐藤:そう! 調べたんですよ。そういう話があったので、東京都に問い合わせ

したり……そのうち、都庁のホームページにやっていいですよって掲載され て、これでで

きるじゃん……って。

賀山さんの話を聞いて、今思い出しましたけど、最初は、ユーチューバーたちは

どうやって配信してるんだろうとか研究したんですよ。配信の解説動画を上げて

いる人がいて、なるほどって。

権利の問題とか著作権とか色々あって検討した結果、うちはYouTubeではなく、

ツイキャスにしましたけど、最初の頃はもう試行錯誤で、とにかく手探りでし

た。ライブハウスなんだから生演奏を聴かせるのが売りだったわけだし、配信な

んて……って思っていましたけれど……あの時はそれしか活路がなかったから

ねぇ。

金井:うちは最初、Facebookでやろうと考えていました。Facebookはスーパー

チャットみたいに投げ銭ができるようになるとか情報があって。それで配信のテ

ストをしてみようというところから始まって……_息子がバンドやってるので、

手伝ってもらったり。

賀山さんは、一番最初の配信ってうまくいったんですか?

賀山:はい、当時はうまくいったと思ってましたね。ドラム、ベース、ギター、

バイオリンという特殊な編成のセッションでしたけど、一応途中で止まることも

なく大きく映像が乱れることもなく終わりましたから。

金井:最初はYouTube でしたっけ。

賀山:はい。去年の5月21日って、配信を始めた店としては早い方だったと思う

んですよ。お客さんもライブに飢えていて。ミュージシャンも一か月半とか2ヶ

月近くライブができてない状態だったので、その溜まったエネルギーの爆発が

あったり……勢いでやって、とりあえず成功だったと思います。 でも当時の配信を

振り返って観てみると……まぁ懸命にやりましたけど、音の

バランスだったり音量だったり全然できてないなーと。カメラ割りがどうこうな

んてことはいいとしても、画面全体のトーンの暗さだったりとか。

それに最初は機材が揃ってなかった。あの時点では成功だと思いましたけど……

今思うと、よくお客さんもミュージシャンも満足してくださったなっていうの

はありますね。

金井:ジロキチも、MCマイクのこととか、配信用に照明をどうしたらいいと

か、インターフェイスが必要だとか、基本的なことさえもわかりませんでしたか

らね。

荻窪ルースターは第1回目の配信はうまくいったんですか。

佐藤:ビデオカメラ1台とスマフォだけでやったんですが、2カメなんで、全体

を撮影する固定カメラと、時々ソロのときに寄ってアップにするためにスマフォ

を使うという方法でやったんですけど、それぞれの画質の違いが酷くて……

ちょっとまずいな、と思いながらでしたね。

あと、チャットで、視聴者のコメントがリアルタイムで出るんですが、これを出

演者に見せながら配信できないかなと思って、スクリーンにプロジェクターで映

すということをやったんですね。そしたら本番直前に配信の映像が止まってし

まって、やべえと思って、とりあえず何か原因になりそうなものは全部外し

て……結局そのコメント閲覧用のプロジェクターも止めてしまった笑。 当時は、原因を

特定するために一つ一つ機材を止めて確認してみるとかできな かったので、何でもかん

でも全部止めて笑。スマフォの電源切れ、とか笑。 とにかくトラブルがあっても、原因が

よくわからない状況でしたね。 でも、その初めての配信のとき、お客さんがコメント欄に

「あ。ルースター だ」って書き込んでくれたんですよ。お客さんは、配信の質とかじゃなくて、

と にかく自分のスマフォやパソコンにルースターのライブが映った、というのに感 動してる

んだっていうのを感じて……うわ、21世紀だ! みたいな笑。

一方、ミュージシャンは、カメラに向かって演奏したけど、無観客だから反応が

ない。拍手もないし、シーンとなるわけじゃないですか。我々もどうしていいの

かよくわからなくて。笑

現在使用している配信機材、システム、かかった費用

金井:荻窪ルースターは具体的にどんな機材を使って配信をしていますか。えー

と、カメラは何台使っていますか。

佐藤:4台です。当時、在庫がなくて全然買えなかったスイッチャーが手に入っ

て……_ATEM mini という機種なんですが、それが4台までつなげるっていうこと

だったので。

うちの場合、そのカメラ4台で充分まかなえている感じですね。

金井:配信用のエンコードソフトは?

佐藤:はい。BSE……あ、それは狂牛病か笑。OBSです。

そのOBSというソフトを入れるためにMacBook Airを買いました。

カメラ4台に、ビデオキャプチャー、オーディオインターフェイス、スイッ

チャー。それでエンコーダーソフトにOBSを使って、うちのPAミキサー卓から音

を送って配信しています。

金井:ざっくり、機材を揃えるのに費用はどのくらいかかっていますか。

佐藤:そうですね、きっちり計算したわけではないですが、ケーブル類、三脚、

どんどん買い足していって、50万円くらいでしょうかね。

金井:照明機材は?

佐藤:ユーチューバーのやり方を色々研究して、最初は導入を考えたんですが、

結局、既存のうちの照明でいけるなということに落ち着きました。

金井:音楽室DXはどのように配信していますか。

賀山:うちもカメラ4台にビデオキャプチャー、Roland V1-HDという 4チャンネ

ルのスイッチャー、それに専用のパソコンを買って、エンコードソフトにOBSを

使っています。

機材を揃えるのには苦労しましたね。

もともとビデオカメラはあったんですが、家庭用というか、HDMI(映像や音声な

どを1本のケーブルにまとめて送ることのできる通信規格の一種)に対応してなく

て、アナログのRCA端子→HDMIの変換を買ったんですが、画質がひどくて。

それで安いカメラを探して対応機種のものを4台揃えたんですが、メーカーに

よって個々の画質や明暗が違いすぎて、使えなかったんです。ですので今

は、SONY製のものに統一しています。

うちもスイッチャーにATEM mini が欲しかったんですが、手に入らなかった。配

信する日程が決まって、それに合わせて無理矢理機材を揃えたという感じです

ね。最初はとにかくわからなかったですから。

佐藤:あの時期、ユーチューバーが激増したり、配信を始めるところが急に増え

て、必要な機材が品薄になって……_。

金井:そうでしたね。

賀山:会社なども含めて、ネット系の機材の需要が高まっていましたからね。

うちもなんだかんだ機材を揃えて50万円くらいかかってます。配信を始めようと

思ったとき、情報サイトで50万以下でできるとあったので、それは一つの目安

でした。

佐藤:ちなみに50万というのは、あくまで配信のシステムだけの話ですね。PA

システム、ミキサー卓とか、ケーブルとかそういうものは含まれてません。

賀山:ライブハウスには元々、照明とかモニタースピーカーとか、ライブ用の機

材がありますからね。

金井:ジロキチの配信は、賀山さんや佐藤さんのやり方とまったく違って、ス

イッチャーもビデオキャプチャーもOBSも使ってないんです。Switcher Studioと

いうiOSのアプリを入れて、iPadで立ち上げてやっています。

このアプリ、iOSデバイスと無線LANルーターがあれば、マルチで最大9カメま

でいけるんです。iPhone8台をWi-Fi上で無線で同期させ、オペレート用にiPadを

使って、アプリの画面でスイッチングしています。

最初は、スタッフのiPhoneをかき集めてやっていました笑。ですので、最初は1

5万くらいでとりあえず配信はできました。でも結局、カメラ専用としてiPhone

を買い増したり、iPhone用にスタンドを買ったりケーブルを買ったりしたのでも

う20万はとっくに超えていると思います。

佐藤:でも、いっぱいカメラ使っての配信だと、スタッフが必要で、逆に人件費

がかかりますよね。

金井:いえいえ、1人でやってるんですよ。

佐藤:1人で?!

金井:はい。PAオペレーターは別ですが、配信は、担当が一人でiPhone9台をス

イッチングしてやっています。

使用しなくなった機材など

金井:配信のために購入したけれど、無駄になった機材ってありますか。

賀山:さっき言ったRCA端子からHDMIに変換するケーブルですね。あとは、ビ

デオカメラ。プロ用のビデオカメラは普通10万円以上するんですけど、ネットで

プロ画質の4Kカメラというのを安く見つけて、それを買ってみたんですが……_

まったく使えない代物でした笑。知らないメーカーで、説明書は全部中国語、み

たいな笑。

佐藤:うわー。

賀山:今は、引き出しの一番奥に、大事に大事にしまってあります笑。

金井:そのうち熟成されて、使えるようになるかもしれません笑。

賀山:たまーに出して、もしかして……と、電源入れてみたりするんですが、 やっぱり使え

ないんですよ笑。幻の4Kです笑。 あとはビデオキャプチャーがUSBのバージョンの関係で

使えなくなったというの があります。それと、2万円くらいのビデオキャプチャー買って

みたらWindows では使えなかったとか……それも大事にしまってあります笑。ケーブルは

最初、試しにホームセンターとかで色々買ったけど、使わなくなって眠っているものが

たくさんありますね。

金井:うちも最初に買ったオーディオインターフェイスは失敗でした。

郡司(ジロキチ副店長・配信チーフ):そう、使っているアプリのサイトで勧め

ていたので……_安かったし、買ったんですが、どうやってもディレイ(音が僅

かに遅れて2重に聴こえる現象)してしまうんですよ。最初はインターフェイス

が原因だってわからなかったので、非常に戸惑いましたね。結局、インターフェ

イス付きの小さいミキサー卓を買って使ったらあっさり解決しました。

金井:やっぱり初めからそこそこ良いものを買わなきゃダメだってのはあるのかな。

カメラはプロ仕様の4kでも、2万円のじゃやっぱり……_。

一同:笑。

金井:佐藤さんのところは無駄になった機材ってありますか。

佐藤:うちは、そんなにないかもしれませんね。

金井;さすが! 賢いですね。

佐藤:ケーブルくらいかな。それ以外はないですね。

金井:今後買い揃えようと思っている機材は?

賀山:うちは最近、ROLAND V-8HDってスイッチャーを入れたので、カメラを増

やそうと思っています。もう1年近く配信をしていますから、少しでもやり方を

変えていかないと、お客さんも、もう面白がってくれないかもしれないし。

ミュージシャンに対しても刺激がなくなるかもしれない。それに何よりオペレー

トしている自分も飽きちゃうかなぁっていうのはありますしね。

あとは、回線スピードを改善させるためにモデムを交換したり、契約内容を変え

たりとか。回線スピードに関しては3倍になってゆとりができたので、心の負担

が減りました。

金井:心の負担……_わかります。それ大きいですよね。

賀山:さっきチャットのコメントの話が出ましたけど、お客さんの反応にはどう

しても敏感になりますよね。観れなくなったとか、画質、音質とか……_。

金井:腹立つことも笑。

賀山;まあ、腹立つというか、落ち込みますね。あとは、こうして3店舗集まっ

て話をしていると、みなさんはどんなやり方しているんだろうとか、刺激になり

ますよね。負けられないというか。お金が無限にあればもっと良い機材は揃えら

れますけど……_。

金井:お金はまったくないですからかね笑。

賀山:あとは、このままずっと配信を続けていくのか、コロナ禍が収まるまでの

暫定の配信なのか。それで迷いますよね。こんなに長く続くとは思わなかったで

すし。

金井:確かにその方向性によって、もっといい機材を揃えようとか、配信方法を

アップデートしていくかどうかは変わってきますよね。

佐藤:当初より、配信チケットは売れなくなっているので、これ以上お金はかけ

られないっていうのもあります。

金井:ジロキチも、天井にカメラ用のレールを引こうとか、色々アイデアも出ま

したけど、これ以上は難しいかも……_。iPhoneのバッテリーが劣化しやすし、

調子の悪いのは買い替えたい、というくらいかな。

配信トラブルの対処法

金井:荻窪ルースターは配信トラブルはどんなことがありましたか。

佐藤:最初は、機材のトラブルよりも、配信チケットの買い方がわからないと

か、買ったけどどうやって配信を観るのか、などの問い合わせが電話やメールで

たくさん来て、その対応に苦慮しましたね。これじゃ、いくつ体があっても足り

ないと笑。それでツイキャスでのチケットの買い方と動画の視聴方法の解説動画

を作ってYouTubeにアップして、観てもらうようにしました。

金井:初めてのことで、お客さんもわかりませんもんね。僕らだって戸惑ったわ

けだし。

佐藤:あと技術的なことでは、なんでいきなり配信が止まるのか、どうして映像

がカクカクしてしまうのか、とか……わからないことばかりでしたね。 あ、あとね、さっ

きの回線スピードの話に似ていますけれど、YouTubeにはこれ くらいの容量の映像や音の

データを送っても大丈夫だけど、ツイキャスはそう じゃないとか……。そういうのがトラ

ブルの原因の一つだったり。

アーカイブの映像を観たら音がズレて聴こえていたという問題もありました。

とにかく何がなんだかわからないじゃないですか笑。そういうトラブルを経験し

ながら少しづつ改善していった感じですね。

金井:アーカイブの音のズレは結局どのように解決したんですか。

佐藤:解決しなかったんですよ笑。結局、こっちの問題じゃなかったんです。ツ

イキャス側に問い合わせたら治った。多分、利用者にずいぶんつつかれたんで

しょうね。

金井:ツイキャス側だって突然これほど利用されるとは思ってなくて、急に対応

を迫られるみたいなこともあったんでしょうね。

佐藤:きっと向こうも、てんやわんやだったんでしょう。

金井:お店側の問題だけじゃなくツイキャスやYouTube、そういうプラット

フォーム側の問題で正常に配信できないってこともありますからね。お客さん

の、視聴者側のWi-Fi環境もありますし。

佐藤:そうそう! 隣の部屋で息子がゲームをしているせいで、配信がちゃんと

観れないとかね。

郡司:視聴者が、気が付かずにブラウザのウインドウを複数立ち上げていて、そ

れで同時に音が鳴って二重に聴こえているとか……_そういううっかりな状況も

ありますしね。

金井:賀山さんのところは、配信のトラブルについてはいかがでしょうか。

賀山:技術的なトラブルはもちろんありましたが、大きく音がズレるとかはな

かったですね。けれど他のライブハウスさんから、プラットフォームや経由して

いる会社の急なトラブルで接続できなくなって配信中止になりましたとか、回線

が途切れて復旧に1時間かかりましたとか、そういう話をたまに聞くので、今で

も毎日ヒヤヒヤしていますよ。

ちょっと画面が止まるとか、カクカクするとか、わずかなズレが発生するってい

うのはやっぱりありますね。ただそれは終わってから気づきます。現場では一生

懸命調整しているつもりなんですが、アーカイブを観て気が付く。

金井:YouTubeだと、土曜日とか日曜日など休日に多くの人が視聴しているせい

か、結構トラブルの確率が高いんですが、ツイキャスはどうなんでしょう。

佐藤:それはあまりないですね。ただ回線が混んでくるのを避けて8時スタート

を7時半スタートにしたってことはありました。本当にその時間が混むのかどう

かわからなかったんですが笑

賀山:話が前後しますが、さっき佐藤さんがおっしゃったように、お客さんから

の問い合わせには苦慮したというのはやっぱりありますね。チケットの買い方が

わからないというのは丁寧にご説明するしかないんですけど、チケット買ったの

に観れないという問い合わせがあって、それは、その場ではこっちもわからな

い……。 で、よく伺ってみると、そのお客さんは、チケットを買ったアカウントと違うア

カウントでツイキャスに入って観ようとしていたとか。スマフォでチケット買っ たんだけ

どパソコンで観ようとして、その場合、ツイキャスからログインするの か、Twitterからロ

グインするのか、Facebookからログインするのかでアカウント が違うんですよ。 でも、お

客さんから問い合わせがあって、電話口で「観れない」って言われてい る時点では、こっ

ちはわからないわけじゃないですか。なかなか難しいなぁって いうのはありました。配信

してその先は……映像を受け取る側の方はこっちか

ら見えませんしね。毎日、今日も無事終わってよかったって、ほっとしていま

す。

金井:いやーほんとですよね。

賀山:こんな、私たちのようなど素人が始めた配信が、実際に多くの人に届い

て、ちゃんと無事に終わるなんて奇跡みたいなものなんですよ。

金井:(ジロキチは)初期の頃、まったくわからない状況の中で、副店長の郡司

くんと2人で、いろいろ試したんです。ミュージシャンも外出できない時期だっ

たので、リモート会議などで使われるzoomなどよりもライブ配信に特化したスト

リームヤードという配信ツールを研究して……地方にいるミュージシャンの自 宅ライブを

ジロキチから中継してみようということになって。 それで富山と高円寺を繋ぐ配信という

のをやったんです。富山の方では、映って いる背景が部屋のタンスで、照明が反射しちゃ

うんで布をかけてもらったり、向 こうでも研究してもらって、オーディオインターフェイ

スを用意してもらった り。 それで配信本番、頑張ったんですが、Wi-Fi環境の違いもあっ

て、音質も画像もひ どかった笑。 でも、音割れして歪んじゃっているんですが、エネルギ

ーの爆発というか、すご くいいライブだったんです。こんなハイテクなことができたんだ

って感動もあっ たし、すごくたくさんの人が視聴してくれて……

いっぱいコメントをもらって、投げ銭もいただいて、すごく励みになりました。

それで味をしめて、その中継シリーズは何回かやったんですが、これがもうトラ

ブルの連続で。どうしてそうなるのか全然わかんないし、歯が抜ける夢とか見て

毎晩のようにうなされた時期もありました笑

佐藤:うわー可哀想。笑。

ライブ配信の音作りについて

金井:配信の音って、これまでのライブハウスの音作りと違うじゃないですか。

その辺はどうやって研究されたんでしょうか。

佐藤:最初は、無観客だったんで、ヘッドホンを聴いてレコーディングのように

音作りをしました。だから、外に出す音は気にせずにできたんですが、お客さん

を入れてやるようになってからは工夫が必要になりましたね。

例えばスネアドラムの音がでかいドラマーの場合、配信の回線の方にはスネアの

音を送るけど、PAスピーカーからは出さないみたいな。メインスピーカーのメイ

ンのボリュームを絞ればいいんだとか、今はそうやって感覚でバランスをとって

やっていますね。もう100回以上配信していますから。

金井:マイクから少しでも離れちゃうと、声が配信に乗らないっていう問題もあ

りますよね。

佐藤:最初は確かにそういう問題がありましたが、今はMCの時だけPAで音量を

上げるとか、パソコンの方で上げるとかしてある程度乗せられるようになりまし

た。ドラムのオーバートップのマイクもあるし。今はマイクから離れて喋ってい

ても、聴こうと思えば聴き取れます。

金井:きっと最初のころよりも意識されて音の調整をされているんでしょうね。

さすがです。

賀山さんは音作りについてはどんな研究をされましたか。

賀山:配信に乗るラインの音(ギターアンプなど個々の音をマイク取りしたも

の)と、ライブ会場で直接聴く音って、全然違うわけじゃないですか。配信の音

を聴いたミュージシャンの方から、ラインの音だけじゃクリアーすぎるって言わ

れたんですよ。そこで、客席にもマイクを置いて、エアーというんですが、その

ライブ感のある音をラインの音にどんどん足していって、その割合が増えていっ

たんです。

金井:ああわかる。うちもです。

賀山:配信の音のバランスについては、休業しているころ、一度いい経験をさせ

てもらって。

中止になったあるライブの日、せっかくなのでDVDの撮影で使わせて欲しいとい

う話があって、私が音作りを担当することになったんです。一曲録っては聴き、

録っては聴きというのを延々と繰り返して、バランスとか音量とか音質とか、例

えばキーボードのLRだったらもう思い切って振ったほうがいいんだとか、音作り

のことを現場で色々指示されてやったんです。ラインのミックスについては、こ

の時の経験が配信の音作りのヒントになって、今、生かされていますね。エアー

については……_最近はクリアーな音の配信の方がいいのかなって思い始めてい

ます。

金井:うーん。そうなんですかね。やっぱり。

佐藤:うちはもうエアーを足すのはやめたんですよ。

金井:えっ。

佐藤:エアーのために2チャンネル使うなら、他のところにマイクを立てたいっ

ていう……_。

金井:なるほど。

賀山:うちはエアーは別のアナログミキサー卓に入れて、配信のラインミックス

と混ぜて出しています。つまり、デジタルのミキサー卓の先にもう一台アナログ

のミキサー卓をかませて、その音を配信に送っています。真偽の程は、実はわか

らないんですが、そう書いてあったんで笑。

金井:みなさん色々創意工夫をされて……_笑。

郡司:確かにジロキチも、最初はデジタルのミキサー卓を使っていたんですが、

賀山さんのおっしゃたように、アナログのミキサー卓でバランスをとった音をデ

ジタルの卓に送ってから配信した方が、音が全然良かったんですよ。

金井:結局、この対談を読んでいただいている方も、ご自分で試行錯誤するしか

ないっていう感じでしょうか。

賀山:元々あった機材とか環境が違いますからね。僕がルースターやジロキチに

行ってそのシステムを使って配信をやれって言われてもできませんから。

佐藤:できたとしても……例えば_ギタリストがみんな、同じ楽器を使っている

のに音色が違うように、僕が音楽室DXに行ってPAをやったら僕の音になっちゃ

うでしょうね。あとは、やっぱり慣れた機材が良いっていうのもあります。使い

やすいですから。ジロキチが今更OBSを使おうと思わないでしょ?

金井:はい、難しいですし笑。

佐藤:ある程度システムを構築して、慣れちゃったら、もうそれでいいんじゃな

いかな。

話が戻りますが、僕がエアーの音を出さないのは、ヘッドホンで聴いている音が

生々しくないからなんです。たとえばレコードって、ラインのミックスだけで、

ちゃんと迫力のある生々しい音になっているじゃないですか。同じような感じで

作って配信に送ればいいわけで。

僕はフィルスペクターとか好きなんです。山下達郎とか大滝詠一とかもきっとそ

うなんだと思いますけど、そういう音作りがが好きという感じかなぁ。

賀山:面白いですね、配信でもそれぞれの店の個性が反映されるっていう……。

金井:そうなんですよね。うちも、ミュージシャンによく「配信もジロキチの音

なんだよね」って言われます。

賀山:ジロキチって、iPhoneだけで撮影しているじゃないですか。あの色味がま

さにジロキチなんですよ。失礼かもしれませんが、4Kのカメラで撮ったら、あ

のジロキチの雰囲気は出ないんじゃないかって笑。

佐藤:じゃあ、ジロキチは中国製の2万円の4Kで撮れば? 笑。

一同:笑

賀山:配信の場合、やっぱり色味の問題がありますよね。LEDって暗いんです

よ。あるミュージシャンに言われたんですが、照明のせいで、面白いこと言って

いるのに、暗いというか、冷たい感じに映ってしまっているから、面白さが伝わ

らないって。

金井:えー笑。

賀山:それでLEDじゃない照明を増やしました。

佐藤:それでその人は面白くなったの?

賀山:まだそれから出演していないんで、面白くなったかどうかはわかりません。

一同:笑

配信のプラットホームについて

金井:荻窪ルースターがツイキャスプレミアを選んだ理由はなんだったんでしょ

うか。

佐藤:一つは権利関係です。ちゃんとJASRACと利用許諾契約を締結しているプ

ラットホームだったということですね。

あとは、ツイキャスプレミア配信は、別のサイトに移動して配信チケットを購入

する必要がなく、ツイキャスのサイトの中で全部完結するんです。

わかりやすかった。販売手数料も5%と安かったことも大きいですしね。

それにやっぱり知名度も利用率も高かったから。聞いたことのない配信のサービ

スっていっぱいあるじゃないですか。まあ、とにかくツイキャスで始めて定着し

ているので、今から他のサイトを利用するってのは……_。

金井:お客さんに登録していただいてやっと慣れてもらったわけですからね_。

佐藤:音楽室DXはツイキャスでやるパターンと、YouTubeでやるパターンと分け

てやっていて、ジロキチはYouTubeで配信してから他のサイトで後売りチケット

を販売するって形ですよね。でもうちは、ツイキャスだけで完結するからわかり

やすいだろうということで。

金井:確かにそうですね。うちはちょっとわかりにくいかもしれません。

賀山:音楽室DXは最初、Youtube、ツイキャス、Streaming+、ZAIKOの4つのサー

ビスが選択肢としてあったんですよ。で、まずは、お客さん的に一番ハードルの

低いと思ったYouTubeを選びました。とりあえず簡単に、多くの人に、幅広く観

てもらうことが先決かなーと思って。音楽室DXが配信を始める宣伝というか、周

知してもらえるように。

ツイキャスの方は最初、ミュージシャン側からの要望で始めました。その人はす

でにツイキャスで個人的に配信をやっていたので、それでそう指定してきたんだ

と思います。

最初始めた頃はYouTubeが8割、ツイキャス2割くらいだったんですが、もう宣伝

も充分かなと思って、今は逆転して、8割がツイキャスプレミア配信になってい

ます。どちらで配信するかはミュージシャンとの話し合いで決めています。

Streaming+、ZAIKOも魅力的だったんですが、ツイキャスは、佐藤さんがおっ

しゃったように、知名度が高いし手数料も一番安い。それに登録してくれている

お客さんもすでにたくさんいるので、それが今も使っている主な理由ですね。

金井:ジロキチはYouTubeしか使ったことないのでわからないのですが、ツイ

キャス特有のトラブルとかってあるんですか?

佐藤:配信チケットが買いにくいってことですね。あとは、たまにチケットを

買ったのに配信が観れないって問い合わせがある。さっき賀山さんが言っていた

ようにFacebookからログインするのか、Twitterからログインするのか、ってこと

なんですけど。まあ、一回解決されれば、次は多分出来るだろうと……_。

金井:その辺は慣れていただくしかなさそうですね。ところでツイキャスは技術

的なトラブルってないんですか?

佐藤:今はほとんどないですね。賀山さんがさっき言ったみたいに、毎回、ハラ

ハラする場面ってのはありますけどね。歯が抜ける夢にうなされるほどではない

です笑。

一同:笑

金井:他には、ミュージシャンが演奏するカバー曲……著作権の問題がありま

すね。

賀山:著作権ももちろんそうですが、有料配信については、アーカイブを残すか

どうかが一番問題です。複製権というものが別にあって、そっちの方が重要です

ね。

佐藤:法人として配信するのか、個人でやるかによって違うということもありま

すから、今から配信を始めようと思っているお店の方々は、その辺りも勉強され

た方がいいと思いますね。

金井:著作権や複製権などについては、複雑に色々あるので、また別の機会を設

けて詳しくお知らせしたいと思います。

今後、配信を考えている方々へのアドバイス

金井:最後に、この対談を読んでくれたカフェとかレストランの店主の方が、お

客さんを入れて、例えば弾き語りライブの有料配信をやりたい、って思ったと

き、何かアドバイスはありますか。

佐藤:まずお客さんを入れてライブをやることになったらJASRACに許諾を得な

ければなりませんね。

まあ、それは置いておいて、とにかく配信をしてみようと思ったら、スマフォだ

けでとりあえずできたりもするので、ユーチューバーの配信のやり方とかを解説

してる動画とか観て研究して、手軽な感じでやってみてもいいかもしれません。

音質や画質にこだわって定期的に配信したいなら、ライブハウスをやればいいわ

けだし。

賀山:佐藤さんがおっしゃるように、手軽に始めるのも全然ありだけど、最近は

お客さんも配信ライブに慣れてきて、目や耳が肥えているというか、色々観てい

るので、やっぱりある程度のクオリティー、音質、画質は求められる気がします

ね。だから続けてやりたいなら初めからある程度の準備、投資が必要かもしれま

せん。

まあ、無料配信なのか、有料なのか、そうならばどのくらいの値段設定なのか、

どういう趣旨の配信なのかによっても求められるクオリティーは変わってくるの

で……予算とかもあるでしょうし。

金井:佐藤さんがおっしゃるようにユーチューバーのやり方を研究するとか、と

りあえずやってみて、うまくいかなかったらきっと自分で調べたりしますもん

ね。この対談を熟読してもらったりとか。

賀山:やると決めたら走り出すしかないというか笑。

金井:あとは……多分最初は、とにかく配信がうまくいくかどうかに気を取ら

れたり、音質やカメラワークなどに凝り出して、つい忘れがちになると思います

が、演奏するミュージシャンの方としっかりコミュニケーションをとった方がい

いですね。

ある女性ピアニストの方が、撮られると思っていた顔の向きの方を念入りにお化

粧して整えたのに、配信のアーカイブを観たら逆側を撮られていてびっくりした

とか笑。鍵盤を上から撮るのはいいけれど、胸元が映ってしまっていて気になっ

たとか。固定カメラで、上半身ばかり映っていて、楽器が映っていなかったの

で、配信を観たけど何をしていたの? って後で聞かれたとか笑。

今後は、ミュージシャンの側にも配信に対する意識を変えてもらう必要もありそ

うですね。

賀山:ミュージシャンに対して、こうしろ、ああしろ、なんてもちろんないです

が、僕らが配信用の音と普段のPAの違いを研究したように、配信においては、ス

テージに立つ人もカメラの向こう側にいる人たちに対する意識を持った方がいい

のかもしれませんね。

金井:それでは長くなってしまいましたが、そろそろ終わりたいと思います。各

店の配信のシステムは、別に簡単な図で掲載しますので、よかったらご参考にな

さってください。

佐藤:無駄な機材を買わずに済みますので笑。

金井:大事ですね笑。それでは皆様、ありがとうございました。

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